1.道路法とは?

1-1.結論

道路法とは、国や地方公共団体が管理する「公道」に関する法律です。
主に道路の整備や管理のルールが定められています。

不動産取引において道路法が関わるのは、以下のようなケースです。
これらに該当する場合は、重要事項説明の義務があります。

  • ①道路予定区域の不動産を売買するとき
  • ②立体道路制度に係る不動産を売買するとき
  • ③利便施設協定のある不動産を売買するとき

また、工事等で道路の利用が必要な場合、道路法が関わるのは、以下のようなケースです。

  • ④道路使用許可
  • ⑤道路占用許可

以下、道路法に関する必要な知識を初心者でも分かるよう体系的に解説します。

1-2.道路法の目的をサクッと理解

道路法を理解するには、その目的を把握すると非常に分かりやすいです。
建築基準法上の道路との違いも明確にしましょう。
「道路法の内容を早く教えて」という方は「2.道路法の対象・制限まとめ」をご覧ください。

そもそも「道路」とは何か?

道路法の目的は「道路網の整備」です。

ただし、ここでいう「道路」とは、私たちが日常的に使う「道路」という言葉(人や車が通れる道全般を指すことが多い)とは定義が異なります。また、「建築基準法上の道路」とも定義が異なります。

「道路」といっても、広い幹線道路から狭い路地までさまざまです。管理者も国や地方公共団体から民間まで多様で、境界の明確さにもばらつきがあります。

このような背景から、法律ごとに定義する「道路」の範囲が異なっています。

建築基準法上の道路との違い

道路法による道路は、

「大きな道路は、国民の通行や物流、災害時の交通手段として重要だから、国や地方公共団体が公道としてしっかり管理するよ。狭い道路や私道などについては、特に細かいルールは決めていないよ。」

という性質のものです。

一方で、建築基準法による道路は、

「住宅を建てるときは、生活しやすいように道路に接してね。接するべき道路は、建築基準法で定めた道路に限るよ。公道だけじゃなくて、私道や小さい道路でも条件を満たせば認めるよ。」

という特徴があります。

これが、不動産取引の場面でよく耳にする「道路」の正体です。

【参考:道路法第1条(目的)】この法律は、道路網の整備を図るため、道路に関して、路線の指定及び認定、管理、構造、保全、費用の負担区分等に関する事項を定め、もつて交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進することを目的とする。(道路法第1条

1-3.道路法が無いと、どうなるか?

もし道路法が存在しなければ、道路の管理体制が曖昧になり、次のような深刻な問題が発生します。

  • 無許可の工事や占用により、通行が妨げられ、トラブルが発生する
  • 老朽化した道路が放置され、物流や経済活動が停滞する
  • 災害時の緊急輸送や復旧が遅れ、都市機能が麻痺する

普段は意識されにくい道路ですが、その地下には上下水道、電気、ガス、地下鉄などのライフラインが通っており、道路は都市の根幹インフラともいえる存在です。 

だからこそ、道路法により道路管理に関するルールを定める必要があります。

  • 道路法の主な目的は、道路網の整備
  • 道路法上の道路は、国民の通行等の観点により、大きな道路を規定
  • 建築基準法上の道路は、住宅の建築等の観点により、小さな道路も規定

2.道路法の対象・制限まとめ

2-1.道路法の対象道路

「道路法による道路」とは、次の4つに分類されます。

内容補足
1高速自動車国道東名高速道路、名神高速道路など
2一般国道国道1号、国道2号など
3都道府県道東京都道317号(山手通り)など
4市町村道沖縄県道39号線(国際通りを含む)など

これらはいずれも、国や地方公共団体によって管理される「公道」です。
一方、私道や農道・林道など、民間が管理する道路は道路法の対象外です。

2-2.道路法の制限

道路法では、以下のような制度が定められています。
ここでは、民間事業者や不動産取引に関係する項目に絞って紹介します。

道路規制・協定に関する制度

内容補足
1道路予定区域(道路法第91条)将来道路となる予定地で、建築等の制限がかかる区域
2道路の立体区域道路法第47条の17)道路の上下空間に建物や施設を設置できる制度
3利便施設協定道路法第48条の39)道路の利用者の利便を目的に、周辺に街灯や並木などを設置できる制度

上記の制度では、不動産に制限を課したり、特定の権利を設定することができます。
該当する不動産を売買する際は、買主が不利益を被らないよう、重要事項説明が必要です(宅地建物取引業法第35条)。

道路使用・占用に関する制度

内容補足
4道路使用(道路法第24条)工事車両の停車など、一時的に道路を通行以外の目的で使用する場合
5道路占用(道路法第32条)看板などを道路上に設置し、継続的に占用する場合

これらはその名のとおり、道路法上の道路を使用・占用する際に許可が必要となる制度です。

  • 道路法の対象道路は「高速自動車国道」「一般国道」「都道府県道」「市町村道」
  • 不動産取引に関わるのは「道路予定区域」「道路の立体区域」「利便施設協定」
  • 道路利用に関わるのは「道路使用許可」「道路占用許可」

3.不動産取引時の重要チェックポイント

不動産取引においては、以下の3つのケースに該当する場合、宅地建物取引業法第35条に基づき「重要事項説明」が義務付けられています。

3-1.道路予定区域の不動産

道路予定区域内の土地では、道路が供用開始されるまでの間、建築や土地の改変を行うには、道路管理者(行政)の許可が必要になります。

具体的には、「土地の形質を変更」「工作物の新築・改築・増築」「物件の付加増置」などが制限の対象であり、重要事項の説明が必要です。

道路予定区域とは

道路法に基づいて道路として整備されることが計画されている区域のことです。
道路予定区域内に工作物などが建てられてしまうと、将来的な道路整備が困難になるため、道路管理者の許可が必要となります。

道路予定区域の事例

東京都豊島区東池袋4丁目付近では「東京都市計画道路幹線街路補助線街路第176号線」が事業中であり、ガードレールの先の土地がフェンスで囲まれており、将来道路として活用されることが見て取れます。

道路予定区域の確認方法

都市計画区域内・区域外で確認方法が異なります。
いずれの場合も、最終的には管轄の道路管理者に直接確認するのが確実です。

①都市計画区域内の場合
多くのケースでは、道路予定区域は都市計画決定されており、都市計画図で大まかな位置を確認できます。

ただし、図面上での判別が難しい場合や、敷地が区域にかかっているか曖昧な場合には、道路管理者に問い合わせて詳細な境界を確認する必要があります。

なお、区市町村の都市計画課では、こうした詳細な線引きについて回答できないことも多く、道路管理部門への照会を案内されるケースが一般的です。

例えば、市町村道であれば同じ庁舎内の土木課道路課などで確認できますが、都道府県道や国道の場合は、都道府県の土木事務所国の道路管理事務所まで出向く必要があることもあるため、事前に効率的な順路を確認しておくとスムーズです。

②都市計画区域外の場合
都市計画決定という制度そのものが存在しないため、都市計画図では確認できません。
この場合は、直接道路管理者に問い合わせて確認します。

3-2.立体道路に位置する不動産

立体道路制度が活用されている敷地では、建物の上空または地下に道路が整備されていたり、道路と建物が一体的に整備されており(道路一体建物)、重要事項の説明が必要です。

立体道路制度とは

道路区域は原則として、地表・上空・地下のすべての空間を含むものとされ、その区域内において建物を建築することはできません。

しかし、「立体道路制度」(道路法第47条の17)を活用すれば、道路と建物を上下に立体的に配置し、それぞれを別個の用途で使用できるようにすることが可能です。

立体道路制度の事例

大阪市浪速区の「OCAT(阪神高速 湊町南出路)」は、立体道路制度を活用し、JR湊町駅の上部空間にバスターミナルやシティエアターミナルを整備しています。

立体道路制度の確認方法

立体道路制度を活用する際は、道路と建物の所有・利用関係を明確にするために、区分地上権や共有持分といった法的権利が設定されるのが一般的です。これらは登記簿に記載されるため、登記簿謄本を確認することで、立体的な権利関係を把握できます。

3-3.利便施設協定が適用される不動産

利便施設協定が締結されている土地では、道路外利便施設(並木や街灯など)が設置されているケースがあります。

協定の効力は所有者が変わっても引き継がれるため、不動産取引に際しては重要事項の説明が必要です。

利便施設協定とは

道路には並木や街灯などの施設を設ける必要がありますが、道路幅が狭いなどの理由で設置が困難な場合、道路管理者と敷地所有者が「利便施設協定」を締結し、敷地の一部に施設(これを「道路外利便施設」といいます)を設置することができます。

利便施設協定の事例

一般国道1号線は、横浜市東部病院付近にて一部歩道幅員が狭くなっています。

道路を拡幅することも困難であったことから、道路管理者である関東地方整備局は、病院側と「利便施設協定」を締結し、幅員の狭い歩道と病院側の敷地を一体管理し、安全で快適な歩行空間を確保しています。

※街灯側は関東地方整備局、点字ブロック側は病院敷地

利便施設協定の確認方法

基本的に現所有者が協定の存在を把握しているため、まずは売主に確認し、不明な点があれば道路管理者に問い合わせるとよいでしょう。

  • 道路予定区域に該当する土地は、建築制限がかかるため重要事項説明が必要
  • 立体道路制度が適用される土地は、地上権等が設定されているため重要事項説明が必要
  • 利便施設協定が結ばれている土地は、協定内容が引き継がれるため、重要事項説明が必要

4.「認定道路」と「認定外道路」

4-1.認定道路とは

「認定道路」とは、一般的には道路法が適用される道路を指す通称として用いられます。

厳密には法律用語ではありませんが、国や地方公共団体が、所定の手続きにより路線の認定をすることで法的に「道路法上の道路」となります。

このような背景から、道路法に基づき認定された道路を「認定道路」と呼ぶのが慣例となっています。

4-2.まぎらわしい「認定外道路」

一方で、「認定外道路」という用語も現場でしばしば使用されます。
文面上は「認定道路」の対義語のように見えるため、道路法が適用されない道路全般を指すような印象を与えることもあります。

たとえば、東京都小平市では「認定外道路」を以下のように定義しています。

【参考:小平市認定外道路等維持管理要綱

第1条 この要綱は、道路法(昭和27年法律第180号)に規定する道路以外の市有道路(以下「認定外道路」という。)等で、通勤、通学及び生活の用に供されている道路を維持管理するため、必要な事項を定めることを目的とする。

(認定外道路等)

第2条 認定外道路等の範囲は、次の各号の一に掲げる道路とする。

(1) 寄附を受けた認定外道路
(2) 宅地開発により帰属を受けた認定外道路
(3) その他市長がとくに必要と認めた道路

このように、小平市が所有する道路法が適用されない道路を「認定外道路」と呼んでいます。

ただし、すべての自治体が同様の定義を設けているわけではなく、「認定外道路」という言葉が出てきた際には、具体的にどのような位置づけなのかを確認することが重要です。

4-3.認定外道路の注意点

認定外道路は、所有者が国・地方公共団体であっても道路法が適用されないため、維持管理・修繕義務が明確でないことがあります。

道路の舗装が傷んでいても、修繕が優先されないといったトラブルもあります。

そのため、認定外道路に関わる不動産取引の際は注意が必要です。

  • 「認定道路」は、一般的には道路法が適用される道路のこと
  • 「認定外道路」は、一般的には行政が所有する道路法が適用されない道路
  • ただし、法律用語ではなくどのような意味合いなのか注意が必要

本記事の監修者

立原祥貴

株式会社Delight Hub 代表取締役

立原祥貴

首都大学東京を卒業後、豊島区(都市計画課)に入庁。

▷不動産の調査窓口や、池袋駅周辺の再開発・地権者交渉、用途地域等の法令改正、都市計画マスタープランの策定、都市計画審議会の運営など、主に都市計画事業に従事。

▷アパート経営をキッカケに土地仕入れに興味を持ち、不動産業界に。売買仲介営業や、iYell株式会社(住宅ローンテック企業)にて住宅ローン提案・マーケティング・マネジメントを経験。

▷2024年、住宅・不動産業界の営業DXを推進したいという思いから株式会社Delight Hubを創業。

▷東京都板橋区出身。資格は宅建士、FP2級など。