1.建ぺい率とは?
1-1.結論
建ぺい率(けんぺいりつ)とは、敷地面積(土地面積)に対する建築面積の割合のことで、建築基準法によって定められています。住宅の防災性を高め、日照・通風・景観などを確保することを目的としています。
制限の対象となる「区域」
- 都市計画区域内
- 準都市計画区域内
- 用途地域の指定のない区域のうち条例により定めれている区域内
これら以外の区域外では、建ぺい率の適用はありません。
以下、建ぺい率に関する専門知識を初心者でも分かるよう体系的に解説します。
1-2.もし建ぺい率の上限が無いと、どうなるか?
もし建ぺい率の上限が定められていなければ、敷地面積いっぱいに建物を建築することができるため、次のような問題が発生します。
- 隣家との距離が近く、火災時にすぐ燃え移ってしまう
- 建物が密集し、日当たりや風通しが悪くなってしまう
- 圧迫感が強くなり、街並みや景観が損なわれてしまう
実際、古くから発展した地域では、建築基準法が施行される以前に住宅が立ち並び、木造住宅が密集しているケースも少なくありません。
このような背景から建ぺい率の上限が定められ、良好な住環境を維持するための制度となっています。
2.建ぺい率の制限まとめ
2-1.建ぺい率の上限(指定建ぺい率)
建ぺい率の上限は、「都市計画区域」および「準都市計画区域内」において適用されます(建築基準法第41条の2)。原則として、用途地域の種別に応じて建ぺい率の上限が定められています(建築基準法第53条第1項)。
ただし、用途地域の指定のない区域(いわゆる「白地地域」。用途地域の色がついていないことによる。)であっても、土地の利用状況に応じて建ぺい率の上限が定められる場合があります(建築基準法第53条第1項第6号)(建築基準法第68条の9)。
建ぺい率の上限が定められている場合、建築主はその上限を守る必要があります。具体的な建ぺい率の上限は次のとおりです。
| 用途地域 | 原則 | ①防火地域内で耐火建築物(+10%) | ②特定行政庁が指定する角地(+10%) | ①と②の条件を満たす場合(+20%) |
|---|---|---|---|---|
| 第1種低層住居専用地域 第2種低層住居専用地域 第1種中高層住居専用地域 第2種中高層住居専用地域 田園住居地域 工業専用地域 | 30 40 50 60 | 40 50 60 70 | 40 50 60 70 | 50 60 70 80 |
| 第1種住居地域 第2種住居地域 準住居地域 準工業地域 | 50 60 80 | 60 70 ただし、80の地域は制限なし | 60 70 90 | 70 80 ただし、80の地域は制限なし |
| 近隣商業地域 | 60 80 | 70 ただし、80の地域は制限なし | 70 90 | 80 ただし、80の地域は制限なし |
| 商業地域 | 80 | 制限なし | 90 | 制限なし |
| 工業地域 | 50 60 | 60 70 | 60 70 | 70 80 |
| 用途地域の指定の無い区域 | 30 40 50 60 70 | 40 50 60 70 80 | 40 50 60 70 80 | 50 60 70 80 90 |
一見複雑に見える表ですが、次のように整理できます。
原則として、用途地域ごとに建ぺい率の上限(=基準値)が定められており、例外として、表内①および②の緩和条件に該当する場合は、建ぺい率のボーナスが基準値に加算される仕組みです。
2-2.建ぺい率の緩和条件
建ぺい率には2つの緩和規定があります(建築基準法第53条第3項)。
| 緩和規定 | 内容 | |
|---|---|---|
| 1 | 耐火・準耐火建築物に対する緩和 | 防火地域内の耐火建築物、または、準防火地域内の耐火建築物・準耐火建築物(建ぺい率80%以外の地域に限る) |
| 2 | 角地緩和 | 特定行政庁が定める条件を満たす角地 |
耐火・準耐火建築物に対する緩和
防火地域内の耐火建築物、または準防火地域内の耐火建築物・準耐火建築物については、建ぺい率の上限に10%を加算することができます。たとえば、指定建ぺい率が60%の敷地の場合は、70%まで建築可能となります。
この緩和は、建ぺい率の本来の目的である延焼防止の観点から設けられています。「燃えづらい構造であれば、もう少し建物面積を広くしてもいいですよ」といったイメージの緩和策です。
ただし、ここで注意が必要なのは、指定建ぺい率が80%の敷地の場合は、「10%を加算して90%・・・」とするのではなく、建ぺい率の制限自体が適用除外となることです(詳細は「3-1.建ぺい率の制限の適用除外」参照)。
また、防火地域とそれ以外の地域にまたがる敷地で、建物が耐火建築物である場合は、敷地全体を防火地域とみなすことができます(建築基準法第53条第7項)。やや難しい言い回しですが、「敷地の一部のみが防火地域である場合でも、耐火建築物であれば建ぺい率の10%加算を適用できる」と言い換えることができます。
角地緩和
特定行政庁(=役所)が定める条件を満たす角地については、建ぺい率の上限を10%加算することができます。たとえば、指定建ぺい率が40%の角地の場合は、50%まで建築が可能です。
この緩和は、建ぺい率の本来の目的である延焼防止の観点から設けられています。「二方向が道路に面している角地は、安全性が高いのでもう少し建物面積を広くとっていいですよ」といったイメージの緩和策です。
ここで注意が必要なのは、「特定行政庁(=役所)が定める条件を満たす角地」という点です。角地の条件は各自治体によって異なるケースがあるため、個別に確認する必要があります。
2-3.その他の制限・緩和
建ぺい率の上限は、地区計画などの制度により制限・緩和されるケースもあります。
3.建ぺい率の制限の適用除外
次のいずれかに当てはまる場合は、建ぺい率の制限を受けません(建築基準法第53条第6項)。
これは「建ぺい率の上限が100%に緩和される」という意味でなく、「そもそも建ぺい率の制限が存在せず、守るべき建ぺい率の上限もないので、敷地いっぱいに建築することができる」ということです。
「結局のところ、それって建ぺい率100%で建てられるということですか?」といった質問に対しては「YES」と回答することになりますが、法律上では、「建ぺい率の制限が適用除外される」というのが正確な表現となります。
| 内容 | 補足 | |
|---|---|---|
| 1 | 防火地域内の耐火建築物等(建ぺい率80%地域に限る) | 延焼の危険性が低いため、建ぺい率の制限が適用されない |
| 2 | 査派出所、公衆便所など | 公共性の高い小規模建築物であるため、建ぺい率の制限が適用されない |
| 3 | 公園、道路などの中の建築物(行政庁の許可必要) | 公共空間内の建築で例外的に認められる |
4.建ぺい率の計算方法
建ぺい率の計算方法は次のとおりです。
建ぺい率の計算方法
建ぺい率(%) = (建築面積÷敷地面積) × 100
具体例は次のとおりです。
建ぺい率の計算例
建築面積60平米、
敷地面積120平米の場合
建ぺい率=建築面積60平米(赤部分)/敷地面積120平米(青部分)=50%

このように、建ぺい率は単純な割り算にて求められます。
ただし、ここで重要になるのは「敷地面積」と「建築面積」とは何か?ということです。
4-1.建築面積と敷地面積
敷地面積
敷地面積とは、「建物が建っている土地を真上から見たときの面積(水平投影面積)」です。傾斜地などでは実際の地表面積よりも敷地面積のほうが小さくなります。
セットバック部分は、たとえ個人の所有であっても道路とみなされるため敷地面積に算入できません。
複数の土地をまとめて敷地面積に含めることもできます。

建築面積
建築面積とは、「建物を真上から見たときの面積(水平投影面積)」のことです。
多くの住宅では、1階部分の面積がそのまま建築面積となります。ただし、2階のほうが張り出している住宅などでは、最も張り出している部分の面積が建築面積となります。
また、バルコニーや軒(のき)、庇(ひさし)などの建物から突き出している部分の取り扱いは特殊であるため、注意が必要です。

4-2.二つ以上の建ぺい率制限にわたる敷地の建ぺい率
敷地が二つ以上の用途地域にまたがる場合には、建ぺい率の上限は「加重平均」によって求めます。
たとえば、ある敷地のうち、建ぺい率60%の部分【A部分】と建ぺい率80%の部分【B部分】にまたがっているとします。
この場合、単純に平均を取って70%…と求めるのではなく、「【A部分】のほうが敷地に対して占める割合が大きく、【B部分】のほうが小さいため、その比率を加味して建ぺい率の上限を計算しよう」といった考え方となります。

5.建ぺい率の調べ方
5-1.建ぺい率の上限の確認方法
建ぺい率の上限は、各市区町村の都市計画課で確認ができます。
多くの自治体では、近年オンラインでの閲覧サービスを提供しており、「地図情報システム(GIS)」や「都市計画情報マップ」などの名称で公開されています。
一部の自治体ではオンライン提供を行っていない場合もありますので、その際は、都市計画図(PDF形式など)にて確認できます。








